1月15日

施工者にスクリーンを天井から吊ってもらう。実写作品で作ったプロップのテーブルと椅子も届いた。このテーブルに日本館の模型を設置する予定。あらゆることがギリギリでずっとドキドキしていたが、なんとかなるかも……?と思え始める。

剥き出しの空間にスクリーンが吊られているのを見て、ミース・ファン・デル・ローエが1942年に制作したコラージュを思い出す。たぶん僕だけではないと思う。アルバート・カーンの航空機組立工場の内部写真を使ったコンサートホールの提案で、ミースはこの巨大な工業建築の写真に、小さな彫刻と、浮遊する音響板を描き加えた。

https://drawingmatter.org/mies-the-universal-space-project/

 

カーンの工場建築は近代工学の到達点であると同時に、技術がもたらした空間モデルをどこまでも展開していこうとする産業的な野心そのものでもあるわけだけれど、そこに古代エジプトの小さな彫刻の写真を埋め込んでくるのがニクい(このコラージュには複数のバージョンがあり、別の彫刻を使ったものも存在する)。どこか呪術的な雰囲気すらあるこの彫刻をなぜミースが選んだのか、詳しくは知らないが、対立的な要素をぶつけようという意思だけは強烈に伝わってくる。ミースのユニバーサル・スペースというと飛行場の巨大なワンルーム空間のほうかと思ってしまいがちだが、そこに呪術的なオブジェクトを衝突させようとする態度こそがミースらしいところだと思う。産業的なストラクチャーは、むしろ与件でしかなかった。

ただ、それだけではない。このコラージュには第三の要素がある。彫刻と巨大空間のあいだを切断するように配置された幾何学的な面。スクリーン。産業的なオブジェクトと、呪術的・前近代的なオブジェクトのあいだに、ロシア・アヴァンギャルドやバウハウスで探求されたような抽象的な図形が挟み込まれている。考えてみれば、このプロジェクトでミースが唯一建築的に介入しているのはこの「中間の抽象性」のほうで、それはモダンにもプレモダンにも属さないものでありながら、両者の併存を可能にする視点、つまり「展示空間」というものを仮設的に生じさせるものだった、のだと思う。

夜、ホテルに戻って缶ビールを開ける。明日は展示の最終調整。

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1月13日